令和5年度税制改正~贈与税~

これまでは、相続時精算課税はあまりお勧めしていませんでしたが、
今後はご利用を検討していただくことが増えそうです。

<主な改正点>(令和6年1月1日以後の贈与に適用)  
1. 暦年贈与 
〇 相続時の課税財産への加算期間が7年(現行3年)に延長される。
〇 延長4年間の贈与は、合計100万円までは相続財産に加算されない。

2.相続時精算課税
〇 新たに110万円の基礎控除が創設される。
〇 基礎控除110万円以下の贈与は、申告不要で、相続時の加算も不要。
 (相続時精算課税を選択した初年度に届出が必要。) 

事業復活支援金

国の「事業復活支援金」が公表されました。

■リーフレット
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_fukkatsu/pdf/leaflet.pdf

■ホームページ
https://jigyou-fukkatsu.go.jp/#utm_source=qrcord&utm_medium=all&utm_campaign=leaflet_hp

対象月は2021年11月~2022年3月、申請期間は2022年1月31日~5月31日です。

要件:対象月のいずれかの月の売上高(月次給付金などは除く)が、基準期間の同じ月の売上高と比較して、50%以上又は30%以上50%未満減少している。

給付額:基準期間の売上高 - 対象月の売上高×5
(上限:▲50%以上は50万円、▲30%以上50%未満は30万円)

原則1回しか申請できないので、上限に達する月があれば、その月で申請する必要があります。

月次支援金

「一時支援金」に続く支援金として、「月次支援金」が発表されました。

「一時支援金」は2021年1月~3月が対象で、この「月次支援金」は2021年4月以降が対象となります。

コロナ禍が続く中、受けられる支援は申請しておきましょう!
詳しい手続き等は、下記URLをご覧ください。

https://www.meti.go.jp/covid-19/getsuji_shien/index.html

一時支援金

令和3年1月に発令された緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛により、売上が50%以上減少した中小法人・個人事業者等に対して、一時支援金が支給されることになり、令和3月8日(月)からオンライン申請の受付が開始されました。

給付対象者や申請方法が「持続化給付金」とは異なるところがありますので、経済産業省HPの「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金の詳細について」で確認する必要があります。

https://www.meti.go.jp/covid-19/ichiji_shien/index.html

主な留意点は次の通りです。

●給付対象者は、飲食店とその関連業者、及び、主に対面で個人向けに商品・サービスの提供を行う事業者と、
その事業者に商品・サービスの提供を行う事業者です。

●上記の対象者であることを示す書類を7年間保存する必要があります。(申請時には提出不要)

●緊急事態宣言に伴う飲食店時短営業又は外出自粛等の影響により、2021年1月~3月のいずれかの売上が、2019年又は2020年の同月比で50%以上減少している事業者が対象です。

●「一時支援金に係る取引先情報一覧」を所定の様式で作成して、提出する必要があります。
 2019年~2021年の各1~3月の取引先情報を売上が大きい順に2つ記載します。

●オンラインで申請IDを取得した後、登録確認機関(認定経営革新等支援機関や、税理士等)の「事前確認」を受けてから申請する必要があります。

控除対象配偶者 等の定義

「同一生計配偶者」、「控除対象配偶者」、「源泉控除対象配偶者」については、令和2年分以後の配偶者の合計所得金額要件が10万円引き上げられます。

令和元年分の確定申告と、令和2年分以降の源泉徴収では取り扱いが異なりますので注意が必要です。

なお、「同一生計配偶者」の定義は、「障害者控除」の判定で必要になります。

売上原価には債務確定の要件はない

女性税理士連盟の租税法勉強会。
今回のテーマは「法人税法22条3項1号の売上原価と費用見積金額」でした。

法人税法22条といえば「各事業年度の所得の金額の計算」について規定していて、税理士試験の法人税法の勉強で最もよく勉強した条文です。

その3項では、次のように規定されています。
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内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

1  当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
2  前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
3  当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
————————————————————————————————————————————————–

法律の条文というのは、ホント読み取りにくいものです・・。

この22条3項では、2号の括弧書きで費用について、償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。と書いています。

つまり、償却費だけは「債務が確定」していなくても費用に計上していいけど、それ以外の費用は「債務が確定」していないと費用に計上できません、と規定しています。

この平成16年の最高裁判決が出るまでは、22条3項1号の売上原価についても「債務確定」が必要と考えられていました。

しかし、この判決によって、当期の売上原価とされるためには「債務確定」は要件ではなく、『支出が相当程度の確実性をもって見込まれ、かつ、その金額を適正に見積もることが可能であること』が要件であるとされました。

勉強会では、”売上原価”の計上のタイミングについて税理士が実務上考えるのは、やはり”収益”と”売上原価”の対応であって、支出が相当程度確実性で、かつ、金額が適正に見積もられるのであれば、”収益”を計上すれば、その期に”売上原価”を計上するのが妥当である、という意見が多数でした。

そして、今回の事例のように、もし最終的に売上原価としての支出がなかったとしたら、その時点で「債務免除益」などとして益金に算入することになります。
税理士試験で繰り返し暗記をした法人税法22条ですが、このように判例を勉強すると、また違って読み方ができました。

相続した株式を売却する時の注意点

株式を売った時の所得は、売却収入 - 購入代金等 で計算します。

売却収入:売る時の単価 ×株数
購入代金:買った時の単価 × 株数

ここで注意が必要なのは、この株式を親などから相続や贈与で取得している場合です。

この場合の購入代金は、次のようになります。
  被相続人や贈与者(=亡くなった親など)が買った時の単価 × 株数

購入代金を計算する時に、相続した時点の単価では計算しないので、注意が必要です。

<亡くなった親などが買った時の単価を調べる方法>
① その株式の株主名簿を管理している信託会社等に電話をして、「株式異動証明書」を郵送してもらう。
② その株式を発行している会社に電話をして、「株式異動明細書」に載っている異動年月日の株価を教えてもらう。

「株式異動明細書」は、原則的に株主名簿に記載されている住所(=亡くなった親などが登録していた住所)あてに郵送されるので、自分や親族が同じ住所に済んでいたら受け取れます。受取れない場合には、株主名簿を管理している信託会社に戸籍などの書類をつけて所定の書類を提出して、自分の住所に送ってもらう必要があります。

ただ、亡くなった親がバブルの頃に買った株式を相続していて、それを今売ったとしたら、損が出ていることが考えられます。
自分が買った株式や投資信託を売って益が出ていても、相続した株式の売却損と通算して、節税できる可能性があります。

相続で取得した株式がある場合には、その株式がもともと購入されて時期を確認して、自分が購入した株式や投資信託との売却時期を検討してみることをお勧めします。

 

 

 

 

記帳指導を担当します

個人で事業を始めたけれど、記帳の仕方が分からないという方向けに、税務署に「記帳指導」という制度があります。
記帳とは、事業の売上や経費などの取引を帳簿に記録することをいいます。

この記帳指導の指導員は税理士が担当しますが、私は昨年に引き続き、今年も担当をさせていただくことになりました。 ”指導”というとおこがましいのですが、そういう名称が付けられているのでやむを得ません。

いまではほとんどの税理士事務所は、記帳を手書きではなく、会計ソフトを使って行っています。
クラウド会計を使っている税理士事務所も増えています。

記帳指導で担当させていただく個人事業主様も、freee・MFクラウド・弥生のオンラインといったクラウド会計を選んで受講される方が増えてきています。
でも、手書きでの記帳を希望される方も結構いらっしゃいます。
年配の方などパソコンを使われない方や、事業が軌道にのるかわからないのでとりあえず会計ソフトを買わずに記帳した、いという方などです。

会計ソフトを使って記帳をしたほうが、一度入力をすればすべての帳簿に自動的に転記してくれて、集計もしてくれるので手間は少なくて済みます。
また、青色申告という税制上のメリットを受けられる制度を申請しても、手書きの記帳では最高額の65万円の所得控除を受けることは難しく、10万円の所得控除しか受けられないことが多くなります。

それでも、記限られた時間(1.5時間×3日~4日)の中で、事業主の方々のご事情に合わせて記帳の仕方をお伝えして、ご自身で決算・申告まで行っていただくのが、記帳指導を担当した税理士の仕事です。久々に「売上帳」や「経費帳」を取り出して、効率よく記帳の仕方をお伝えできるように準備しているところです。

医療費控除とメディケーション税制の注意点

前回のブログで花粉症の市販薬について書きましたが、今回は医療費控除とメディケーション税制の注意点についていくつか挙げてみたいと思います。
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、従来の医療費控除との選択適用となりますので、いずれか一方を選択して適用を受けることになります。

[医療費控除についての注意点]

・花粉症や風邪薬などの市販薬も、治療目的であれば医療費控除の対象になります。

・歯科矯正の費用については、発育段階にある子供の歯並びを矯正するための費用は慰労費控除の対象となりますが、容貌を美化したりするなどのための費用は、対象になりません。
子供の歯科矯正は80万円前後かかることが多いようです。医療費控除の対象にならないと思っている方が意外と多いので、ご注意下さいね。

・平成28年分の確定申告書までは、医療費控除の適用を受けるためには、医療費の領収書を添付又は提示する必要がありましたが、平成29年分の確定申告書からは、「医療費の明細書」又は「医療保険者等の医療費通知書」を添付することに変更されます。だだし、変更後も確定申告期限から5年間は、領収書を保管しなければなりません。
経過措置として、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、改正前の医療費の領収書の添付又は提示をすることで、医療費控除の適用を受けることができます。
この改正は、後で説明する「セルフメディケーション税制」についても同様です。

・医療費控除の金額は、次の式で計算した金額です。
(実際に支払った医療費の合計額ー保険金などで補填される金額)ー10万円 又は 総所得金額等の5% (最高で200万円)

この 総所得金額等の5% というのがポイントで、「医療費控除は医療費が10万円を超えないと受けられない」と思っている方が多いのですが、総所得金額が200万円未満の人は、医療費が10万円未満でも適用されます。
例えば、総所得金額が100万円であれば、100万円×5%=5万円 を医療費が超えれば、医療費控除の適用を受けることができます。

 

[セルフメディケーション税制について]

<概要>
平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、生計を一にする(=日常生活の資金を共にする)配偶者や親族のために「を支払った場合には、セルフメディケーション税制の適用を受けることができます。

<摘要を受けるための条件>
セルフメディケーション税制の適用を受けようとする年分に、健康増進などの「一定の取組」を行っていなければなりません。生計を一にする配偶者や親族は、この「一定の取組」を行っていなくても構いません。

<特定一般用医療品等購入費」とは>
医師によって商法される医薬品から、ドラッグストアで購入できるスイッチOTC医薬品の購入費をいいます。セルフメディケーション税制の対象となるスイッチOTC医薬品の具体的な一覧はこちらです。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000167980.pdf

<控除額の計算方法>
(実際に支払った「特定一般用医療品等購入費」ー保険金などで補填される金額)ー1万2千円  (最高で8万8千円)

 

市販薬を買った時のレシートは取っておくようにしましょう。医療費のあまりかからない家庭でも、年の後半で意外と病院にかかってしまった、なんていうこともあり得ます。
その場合には、治療のために購入した市販薬のレシートも足して、医療費控除の計算をしましょう。
ただ、セルフメディケーション税制については、今のところ対象となるスイッチOTC医薬品の購入額が高額になる人は少ないと思うので、メリットは少ないように思います。

 

 

無利息でお金を貸したのに税金がかかる!?

私が所属している全国女性税理士連盟の京滋ブロックでは、「租税判例百選」という本の判例を担当者が発表し、同志社大学法学部教授の田中治先生に解説をしていただくという勉強会を月1回ほど行っています。
昨日は私がその発表担当にあたっていました。

テーマは「無利息融資と法人税法22条2項 ~清水惣事件」(大阪高裁昭和53年3月30日判決)でした。あぁ難しかった~(^^;

☆概要☆
・法人Xは、子会社Tの事業達成を援助する目的で、無利息でお金を貸しました。法人Xは利息をもらっていないので、この貸付については税金を払いませんでした。

・しかし税務署Yは、法人Xが実際に利息を受取っていなくても、子会社Tから利息を受取って、それを子会社Tに寄付したのと同じことだと主張しました。ここまでなら、プラスマイナス0で法人Xには税金がかかりません。けれども、寄付金には全額は損金(会計の費用にあたる)にしてもらえないという決まりがあります。その結果、法人Xは無利息でお金を貸したのに、この貸付について税金を支払うことになったのです。

・ちなみに、ただでお金を借りた子会社Tの方には税金がかかりません。

☆説明☆
利息をもらわずにお金を貸したのに、貸したほうに税金がかかって、借りた方に税金がかからないなんて、おかしい!と普通の感覚では思います。
ただ、この法人Xが儲かっている会社で、子会社Tが赤字会社だとしたら・・・。
法人Xがお金を銀行に預けて利息を受取ったら、それに対して税金(法人税)がかかります。でも、子会社Tがこのお金を銀行に預けて利息を受取っても、赤字会社なので税金はかかりません。
法人Xは子会社Tに無利息融資をすることで、所得を振り替えて支払う法人税を減らそうとした、とも考えられるのです。

この判決では、法人Xの子会社Tへの貸付金の利息相当額は、法人税法22条2項の「無償による役務の提供」にあたって益金(会計上の収益)となり、また、法人税法37条7項の「経済的な利益の無償の供与」にあたるとして寄付金とされ、寄付金のうち損金に入れてもらえない部分について、税金を支払うという結果になりました。

しかし、なぜ利息相当額が22条2項にあてはまり、37条7項の寄付金にあてはまるのかについては、裁判所の説明も幾通りかあって、正直こじつけのような箇所もあります。
またこれとは異なる学説上の考え方もあるのです。あ~、ややこしい。

☆感想☆
税金の世界には、必ずこれが答えというのが無いことが多く、普通の感覚では税金がかからないじゃないの?と思うところに課税されるケースも多々あります。
今回の事例は高裁判決でしたが、最高裁判決が出ると、たとえ疑問を感じる判決であっても、実務では従わざるを得ません。少なくとも次の最高裁判決が出るまでは。

判例の勉強会では、「こんなのレアケースだな」と思う事例もありますが、今回の「親会社から子会社への無利息融資」は、よく行われていることだと思います。
税理士は多くの判例にあたっておくことが大切だと改めて思った勉強会でした。